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「燃え上がる炎とともに」
作家の吉田和子氏によると、人間の死に劇的なものから順位をつけるなら、「第一が心中、第二、自殺、第三、事故死、第四が病死だろう」という。心中にも一家心中などさまざまの形態があるが、ここでいう心中は男女を念頭に置いている。
そのなかにも理想像というものがあって、「若いこと、美しいこと、愛し合っていること」。さらに理由にも注文があって、「経済的理由は駄目。病苦も駄目。親の反対、家の事情」だという。
悲劇的運命のヒロイン、清朝末裔の愛新覚羅慧生(あいしんかくらえいせい=小説ではエコとした)と、学習院大学の同級生大久保武道がともに亡くなった昭和32年の天城山心中。
二人が純粋に愛し合っていたことは残された往復書簡を見れば確実であり、しかもそれを貫くことの難しさが二人を死に駆り立てたことは想像に難くない。燃え上がる炎のような愛を「永久保存」するために、二人は心中を選ぶ。すなわち、作家の吉田和子氏のいう理想の条件をすべて満たした心中といえよう。
全体を流れる静謐なイメージといい、激動の昭和と分かちがたく結びついたストーリーといい、まさに、曽根崎心中と並ぶ日本心中史を代表するドラマチックな事件というべきであろう。
「燃え上がる炎とともに」は、2007年7月25日「日本図書館協会選定図書」に選ばれました。
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